うりずん

うりずん」とは沖縄地方の言葉で、体を動かしたくて、むずむずとする季節のことを言う。
−らしい。本の後書きより。

そんなタイトルの作家・吉田修一と、写真家・佐内正史がコラボをした短編小説集。
吉田修一は昔から好きな作家でほぼ全ての作品を読んでいるというぐらい好きな作家さんです。
佐内正史はなんとなくいろんな雑誌やCMなどに取り上げられていて、作風は日常を切り取るそれも日常的な画で。
そんな写真家だと僕は思う。

佐内正史の写真から吉田修一が物語を作り出していく作業にとても興味を持ちました。
随分と昔に読んだ記憶はあるのですが、ふと立ち寄った本屋に古本として文庫本版が売られていたのでつい手に取り買ってしまいました。
だから読むのは二度目ということになります。一つ一つの物語が極端に短くて、一応スポーツをテーマに写真と物語を作っているらしいのですが、あまり関係ないような気もする写真と物語です。
しかし、どれもが短いんだけど、ほんの一場面を切り取っているだけなのだが、ぐっとくるんです。
またこうして読み返してみて、この作家さんの感性というか感覚にすごく驚かされます。
佐内さんの写真はあまりにもありきたりな、何気ないものばかりなのに、そこからこうして物語を作ってしまうのですからすごいとそか言いようがありません。
毎月送られてくる写真を一カ月も眺めて、作品を作っていったと書いてありました。
吉田修一の良いところを気軽に味わえる一冊だと思います。
佐内正史の写真もこれだけ見ることができるのもお値打ちかと。

うりずん (光文社文庫)

うりずん (光文社文庫)